こんにちは。設計の押谷です。
いま、藍舎で設計しているお家には、絶対に提案しようと決めているコンセプトがいくつかあります。
その一つが“フラットアウト”という設計コンセプト。
耳馴染みはないかもしれませんが、お客様から私たちを選んで頂いている一番のポイントでもあるんです。
という訳で今回のこの記事は、
『何故、僕たちがこの“フラットアウト”をお勧めし、そしてそれがお客様にふるって採用されるのか』
これをテーマに、お話をさせて頂ければと思います。
フラットアウト設計とは、“広い空間をつくる”のではなく、“広く感じることのできる空間をつくる”設計方法のこと。
目の錯覚を利用することで、リビングやダイニングが実際の畳数よりも2倍近く広がっているように感じられ、四季を通じて中庭を楽しみやすくする効果もあります。
それではここから具体的な手法に入っていきますね。
まずは2種類の写真を見比べてください。
どちらが広がりを感じるように見えますか?
おそらく右側の写真ではないでしょうか。
一般的にデッキなどにつながる大きな窓は、こういうタイプだと思います。
この場合では、サッシの上部に下がり壁が配され、明らかに「はい、ここから外です。」という隔絶感があると思います。
具体的にいうと、2m40cmの天井の高さに2mのサッシが付き、そこに40cmの下がり壁が配置されます。上の写真の矢印の箇所が下がり壁です。この壁によって、はっきりと中と外に線が引かれてしまうのです。この設計では『広がり』を感じる事が出来ません。
フラットアウト設計の場合はこうなります。
サッシの上部分の下がり壁がないことがおわかりになると思います。一般的なサッシの高さを2mではなく、天井の高さと同じ2m40cmのものを採用しています。内部の天井から、下屋やバルコニーの下部が、そのまま伸びていっていますよね。
二つ目は、引違サッシではなく引き込みサッシを付けることで、より効果的になります。
引違サッシとはこういうものです。
全体の幅は2m70cm程あるのですが、実際に開く部分は半分以下になります。開口面積が狭い為、あまり広がりを感じる事が出来ません。
それが、フラットアウト設計ではこうなります。
フラットアウト部分のサッシはなるべくこういった引き込みサッシを付けています。
こちらは、窓の部分すべてが壁の中に引き込まれ、開口面積が大きくなるため、より中と外の境界が曖昧になり、広々と感じられるのです。
まずは、写真を見てください。
室内の天井部分から、外部のバルコニーの下部や下屋部分に同じ材料を同じ向きに使い、そして同じ高さに揃えています。すると、視覚が室内の天井からそのままバルコニーへ広がり続けていくようにとらえるのです。
ちなみに床の向きも外部のデッキと同じ向きにし、そのまま室内から伸びていくようにそろえています。
さらに段差を無くす事により、より広がりを感じる事が出来ます。
フラットアウトはそのまま外に伸びやかに作ればいいという訳ではありません。
ある一定の広さで、“ここまで”というラインを設けてあげる方がより効果的です。
この写真でいうと、このウッドデッキの出先ラインになっているこの梁がそこにあたります。
実は広々としすぎている空間では、落ち着きがなく、拠り所のない空間になってしまい、逆に疲れてしまいます。
室内から外に、緩やかな境界を作ってあげた後のデッキ部分には、『終わりライン』を引いてあげる事をおススメします。
そうする事で、室内のリビングから外を眺めた時にまるで“デッキラインまでがリビング空間”のように感じられるのです。
ですから、この何気ない一本の梁も実はとても大事なんです。
室内からは広がりを感じる設計を。そして、屋外に出たら逆に、閉じていく設計、すなわち境界ラインを限定するという逆の考え方が必要になります。
フラットアウトの説明は以上です。
『中庭を楽しむ家』という、僕らの家造りのメインコンセプトを補助してくれる設計手法です。
もしも下の項目に共感されるご家族様がいらっしゃいましたら、ぜひ取り入れてみてください。
きっと大満足されると思います。
室内から広がっていくウッドデッキをもう一つのリビングにして、暮らしをもっと楽しんでみませんか。
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